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2020/07/21 12:31

PREBLICの今村です。





今回は、まことしやか囁かれているレザージャケットの都市伝説的な話です。




社会に不満の多い時代には革ジャンがよく売れる』というそんな話





きっと服好き、革好きの方にはお酒のネタになってくれる話だと思います。

ちなみにこの話は、レザージャケットを販売している今の自分にとってはとても都合の良い話。

ただ、今は100年に一度と言われるウイルスの襲来で例外になるかもしれませんが、早く世界全体のウィルス問題が終息することとこの都市伝説がリアルであることを強く願って今回書かせていただきます。





「社会全体が不満が多い」


「革ジャン」





という2つの因果関係。





この因果関係を語るには少し歴史的な話を混ぜてお話しする必要があるので少しだけお付き合いください。




カウンターカルチャーの象徴とも言うべき正装のような革ジャン。

もともとパイロット用のフライトジャケットや防寒着、軍用として着用されていたレザージャケット。

そのレザージャケットを『革ジャン=不良』というイメージとして大きく世界に広めるきっかけになったのは映画『乱暴者』だと思います。1953年にアメリカで公開されたマーロンブランド主演映画です。

Tシャツとロールアップしたジーンズ、そして、革ジャンというスタイル。これに大いに影響を受けた当時の若者達。




このスタイルに沢山の若者が影響を受けた背景には、、



1950年代のアメリカは、第二次世界大戦後、好景気に包まれていたのと同時に、社会全体がどこか生気に乏しく、画一化されていきました。そんな時に若者の目に飛び込んできたマーロンブランドの『モーターサイクルに革ジャン』というスタイル。当時の若者は戦争から帰還したばかりで、どこにも吐き出すことのできない猛烈なエネルギーを注げる対象がありませんでした。画一化された習慣の当時のアメリカ。『モーターサイクルに革ジャン』が当時としては真新しく衝撃で、心を鷲掴みにされたことは説明不要でしょう。









そして、1950年代後半〜60年前半のイギリス。マーロンブランドの影響はアメリカだけに留まらずイギリスにも影響を及ぼしていきます。映画の内容は当時としては暴力的なシーンも多かったことから若者の暴力行為を助長してしまうことを恐れたイギリス政府では映画の公開を14年間中止していたそう。

しかし、いくら中止しようがマーロンブランドのスタイルの影響は留まらず。1960年前半のイギリスではマーロンブランドのスタイルを独自に解釈し、イギリス独自のモーターサイクルと革ジャン文化が発展していきました。(その中心的な存在だったのが1959年にイギリスで誕生したモーターサイクルのクラブチーム『59 Club』)

アメリカとは違い当時のイギリスのスタイルはレザージャケットにピンバッヂやスタッズ付けていました。

パンツは細身のレザートラウザーズ。そして「シーブートソックス」と呼ばれる白いソックスをロングブーツに少しだけロールアップさせています。





1960's Vintage Photo




from 『PRIDE AND GLORY』


2016年に販売された「ROCKERS」と呼ばれる人たちを撮った写真集『PRIDE AND GLORY』。1960年代から現代までスタイルを変えずに生き続けている人たち(ROCKERS)などを撮った一冊です。





これは、私がロンドン在住時に59 Clubのメンバーに聞いた話。(現在も59 Clubは存続しています)




「恐らく初めは革ジャンに付けるピンバッジもスタッズの数も少なかったと思う。隣のあいつが俺よりもピンバッジとスタッズが多くて俺より目立ってる。『俺の革ジャンも増やすか』みたい連鎖でどんどん増えていったんだと思う。」

こんな話を聞きました。その話の裏付けになるような理由に、本来なら自分の乗っているバイクの車種のみのピンバッジをつけるところを自分のバイクに関係のないピンバッジまで何でも付けている当時の革ジャンもたくさん残っています。(ピンバッヂは、バイクメーカー、バイクの車種、イギリスの国旗、レーシングフラッグなど様々なものがありました)

因みになぜそこまでたくさんのピンバッジやスタッズを付けるのか?と理由を聞いたところ、




「自分のアイデンティティーを示すため、俺が何者かを示すため」





この欲求はどの時代でも変わらないのかもしれません。







そして、イギリスにとってアメリカ製のモーターサイクル、アメリカ製の革ジャンは輸入物で高価。なかなか手軽に出せなかった。(ちなみ映画乱暴者でマーロンブランドのモーターサイクルだけはイギリス製のトライアンフです)ほとんどの若者は安価なPVC(合皮)のジャケットを着ていたとかちなみに裕福な家系に生まれた若者か年配者は本革製の革ジャン着ていたそう。PVCを着ていた若者は、本革の革ジャンを纏っている者たちのことがさぞ羨ましかったでしょう。

バイクに関しては、イギリス製のトライアンフが多く、お金に余裕のある人はノートン、BSA、VINCENTなどが多かったそう。



そんな当時の1960年前半のイギリスはというと、「口を開けば嫌われる」という言葉が残っているぐらいで、この意味は選ぶ言葉や表現、アクセントで階級がすぐにわかってしまうという意味。つまり階級社会というものがあり、階級によって選ぶ言葉やアクセントが違うということ。住んでいる地域も違い、身なりや身元によって入れるお店もあれば入店を断られるところもあったり。変えようもない出生ややり場のない不満がここにもありました。



そして、1970年代のロンドンでは、パンクロックが、、、



歴史を紐解いてみてやはり『革ジャン』と『社会への不満』という2つの関係は深そうです。

決して逆らうことのできない状態を抗うように、「俺は他の誰とも違んだ」という自分が『何者か』であることを信じるための意思表示として革ジャンを着ていたのだと思います。




無意識の人もいるかもしれませんが、情緒と選ぶ服はなかなか密接な関係にあると思っています。

そして、その情緒は社会によって大きく変化すること。



革ジャンを着るとどこか心が強く保たれるような。どこか守られている感覚になれるのは、自分だけではないと思います。



今回はそんな都市伝説のような話でした。



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さて、最近の動きなのですが、サンプルのレザージャケットが完成しました。


このレザージャケットはサンプルという名の自分のジャケットです。





Model : STAND

Leather : Deer Skin col.Royal Navy

Body Lining : Brown Check

Sleeve Lining : Burgundy Satin



ディアスキンのネイビーを使ったSTAND。

PREBLICでは、定番のレザージャケットの1着です。ダブルブレスト仕様に表にはポケットが2個というシンプルな面構え。後ろ身頃には、アクションプリーツが配されることで機能性にも富んだレザージャケットです。




今、THOMASのダークバーガンディーを使っていて、これに合わせてブラウンスエードの靴を買いました。

そしてその靴に合うジャケットが欲しくて作りました。どうしても今の気分的にダブルのライダースが良くてバイクでも街着でも違和感なく着れるものが良かったんです。


ロイヤルネイビー色は、ブラウンの靴ととても相性が良いです。

見た目はダブルライダースでありながら、ロイヤルネイビー色であることでブラックのダブルライダース特有の強さみたいなものをうまい具合いに分散させてくれます。「今日はほんの少しだけ柔らかさを出したい」という日にはバッチリです。

レザー特有の光沢からデニムとも違う、どこか品を感じる色合い。



THOMASのダークバーガンディーを使っていることからそれに合わせてブラウンの靴を履く機会が増えました。あまりない発想かと思いますが、革小物に合わせて着るものと履く靴が変わりました。


実は、これに合うパンツも欲しいなと思いスラックスも作りました。(このスラックスは販売用ではありません)


ブラウンスウェード靴、グレーのスラックス、ネイビーレザージャケット、ダークバーガンディーの革小物。

なかなかの組み合わせ。






そして、バイクの日はチノパンかデニムにブーツスタイル。


店に着いた瞬間に靴は履き替えます。









前半にレザージャケットの背景について書いていた時にふと昔のことを思い出しました。

2008年頃私が、Lewis Leathers ロンドン店で働いている時に写真家マーカス・ロスという人が本店前で撮ってくれた一枚。

右が自分で、左が文化服装学院の同級生です。ちなみにマーカス・ロスは『Jocks & Nerds Magazine』という雑誌のオーナーでRockersや音楽にも造詣の深い人物です。12年前。若いですね。



それではまた火曜日に。