新しくレザーのテーラードジャケットBUNCHが加わりました。
もともと、イギリス在住時にはテーラーの縫製士としての経験からテーラードジャケットには特別な思いがあります。
国によって仕立て方が大きく変わり、デザインで言うと、衿とラペルにも国の違いがあります。
衿とラペルを見て多少の好みとアイデンティティが分かるような気がします。
ちなみにラペルとはこの部分となります。
特にこのラペルの幅の太さ、衿とラペルが縫い合わさるライン(ゴージライン)の角度には好みが別れます。
よりクラシカルにあまり時代にも左右されにくいものに仕上げたいという思いから、ラペル幅は太くし、ゴージラインの角度は気持ち上げています。
ジャケットのラペル幅とシャツの衿、そしてネクタイのノット(結び目)の大きさは比例すると言われています。どこかが大き過ぎたり、もしくは小さ過ぎたりすると目にした人にどこかアンバランスな印象を与えてしまいます。
よりたくさんの方に合うようなラペル幅に仕上げています。
極端に大きい衿や極端に小さいもの以外には相性の良い大きさに仕上げています。もちろんTシャツの上から羽織っても相性は良いです。
画像では分かりにくいかもしれませんが、ゆるやかに上昇するカーブにすることで洗練された印象とクラシカルな印象を残した形状に仕上がっています。
基本的にゴージラインの始まりは着用した時のシャツの衿の半分の位置に位置することが定番と言われています。
この位置から衿の形も考慮しながら直線に引っ張るとどうしてもゴージラインの角度が下がってしまうため緩やかなカーブを加えています。
ゴージラインの角度が下がるとクラシカルではありますが、洗練さに少し欠けると思い、この形状に行き着きました。(もちろん好みはあります)
そして、衿の剣先とラペルの剣先は敢えて角を出しています。ビスポークで仕立てたウールのジャケットの襟の剣先とラペルの剣先は小丸に仕立てることが多いですが、
レザーのテーラードジャケットはウールとは違いどうしても重厚感のある雰囲気になることから、出来るだけデザインに軽さ出したいと考え、剣先は角を出しました。ジャケットの顔とも言える衿とラペルです。剣先の形を変えるだけで雰囲気もぐっと締まった印象に変わります。
そして、ボタンホールにも拘りました。
レザージャケットのボタンホールは大きく分けて2つあります。
糸で縫われたものと、レザーの玉縁で仕上げたものです。
こちらは、レザーの玉縁で仕立てました。元々この玉縁のボタンホールはヨーロッパで1940年代頃からある技法です。ただ昔のものはパイプの幅が片方で0.5cm程で両玉縁になると1cmもの厚みになります。そして、周りをステッチ(ミシン縫い)でたたいたものです。
両玉縁が1cm幅で、周りにステッチまであるとどうしてもボタンホールの主張が強くなってしまいます。極力ボタンホールは主張させないために、両玉縁は最大限に細くし、本来は周りにあるステッチも玉縁と身頃の縫い合わさる溝のラインにきれいに落とし込むことで表からはステッチが見えないようにしました。
袖のボタンは4つボタンの本切羽で仕立ててします。
後ろのセンターベントはクラシカルに深めに仕上げることで運動量も高くなります。
レザーのテーラードはどうしても重たい雰囲気になってしまいます。
重くなり過ぎない素材の良さを生かしたデザインを見せるためにステッチを省くことや切り替え線をなくすなど安易な仕立てにしたくありませんでした。
クラシカルな印象は残したいし、伝統を無視しすぎた仕立てにはしたくありませんでした。
たくさんの伝統的な技法をより進化させてレザーのテーラードジャケットBUNCHが完成しました。