「馴染み」と「新しさ」の大事
「馴染み」とは、今まで無意識のうちにたくさん目にしたことのあるもので慣れ親しんだもの。
昔から目にしているので、無意識にすんなりと心に受け入れやすいものです。
「新しさ」とは、これまでに見たことのないものや経験がないものです。
PREBLICは「馴染み」と「新しさ」の2つを強く意識しています。
ただ「馴染み」のあるものでは、背景と化してしまい、人の意識に残りにくいと感じます。
そして、ただ単に新しいものでは、馴染みのあるものへの繋がりが感じられず、拒否反応が出てしまいます。
なぜ「馴染み」の中に「新しさ」が必要か?
それは、「馴染み」があると親しみがあるため取り入れやすく、そこに「新しさ」加わると新鮮であるからであると考えます。
今回、製作したレザージャケットにも、「馴染み」の中に「新しさ」を加えました。
今回は、レザーについて書きたいと思います。
ヴィンテージのレザーでは、茶色の革に顔料染めで表面のみ黒に染めています。
そして、時間とともに表面の黒が擦れ下地のブラウンが出てくるというものです。茶芯とも呼ばれたりします。
PREBLICで使用しているレザーは、ここから少し先に進んだレザーに仕上げています。
まず、タッチがしなやかであること。
ヴィンテージのレザーは、少しハリが強いものが多く、この原因は黒に染める時の顔料染めが強く影響していると考えられます。顔料染めとは、簡単に説明するとペンキ塗りのようなもので、表面をコーティングするように乾くと塗料にはハリが生まれます。
PREBLICで使用するホースハイドは、まずダークブラウンに下地まで染料染めし、その後表面のみ黒の染料染めをしています。そして、仕上げに微量に黒で顔料染めしています。染料染めとは、水性塗料のことで顔料染めとは異なり、繊維の中に染み込むように染まります。みなさん一度は使った経験のある水性絵具のようなイメージです。染料染めは、染料がレザーの繊維に染み込むことで素材の風合いをあまり変えることなく染めることが可能です。
そして、最後の仕上げに顔料染めを微量に加えています。この「微量に」というのが肝です。下地がブラウンで、黒の染料染めだけだと下地のブラウンが表面に残ってしまうことから、黒に見えにくくなってしまいます。そこで、「微量に」顔料を加えることでしっかり黒に染めることができます。
風合いは、ヴィンテージのような「馴染み」のあるクラシカルな印象も残し、さらにほとんどは染料染めなのでしなやかさも兼ね備えた「新しさ」のあるレザーに仕上がりました。
着る度に、風合いは増し、下地のブラウンが少しずつ表れることで着始めた時から長年着用した時の間、その時その時にしか出せない変化が楽しめます。